今回は、おきなわSDGsプラットフォームプロジェクトチーム「チームうふやんばる」の興津世禄さんが、国頭村森林組合の事業内容や、やんばるの森についてご紹介します。

チームうふやんばる
興津 世禄 さん
国頭村森林組合の主な事業内容
国頭村森林組合は、沖縄本島北部に広がる豊かな森林資源を活用し、「やんばるの森」の保全と持続可能な林業の推進を行っています。
【1】森林整備事業
森林の保全や持続可能な利用を目的に、植林や伐採、下草刈り、災害防止、生態系保護、森林データ管理などを行っています。


【2】木材加工事業
伐採した木材を製材、チップ、おが粉などに加工し、建材や紙材料、燃料として活用しています。


【3】環境調査事業
森林パトロールや動植物の分布調査などを通じて、生態系や環境の現状を把握し、保全や管理の計画に役立てる活動を行っています。


「やんばるの森」は手つかずの自然ではない!?
世界自然遺産に登録された「やんばるの森」は、「手つかずの自然」と紹介されることが多いため、古来より守られきた原生林だと思っている方は多いかもしれません。けれども、実はそうではありません。
琉球王国時代、人口増加に伴い住居などを建てるために多くの木を伐採していました。このままではいけないと、三司官を務めていた蔡温(さいおん)が林業政策に取り組み、人が森を管理して保護・育成する「杣山(そまやま)」を作っていました。当時、日本の歴史上でもきちんと森を管理したことはなく、とても珍しい政策です。
近代では、地元集落が中心になって森を管理していましたが、戦時中は燃料としても木が必要だったので伐採し、戦後復興の際も伐採していました。その後、もう一度きちんと植え直して、木材として使いながら森林を復活させてきたのが現在の「やんばるの森」です。実は、今が歴史上一番良い森の状態といえ、だからこそ世界自然遺産にも登録されたのです。
人が経済活動(林業)をしながら、世界自然遺産に登録されるレベルの森を作り上げてきた事例は、日本にはほぼありません。よくいわれる「人と自然の共生」を体現しているのが「やんばるの森」であり、その点が最も価値のあるところだと思います。

世界自然遺産「やんばるの森」を知ってもらおうプロジェクト
「やんばるの森」の生態系・歴史文化的背景、および「やんばる型森林業」について、フラットな立場で理解を深めてもらうことにより、「やんばるの森」がもたらす価値について、都市部の方々に知ってもらい、森林・林業について考えるきっかけを作ることを目的に、『世界自然遺産「やんばるの森」を知ってもらおうプロジェクト』を立ち上げました。
プロジェクトチームが解決したい課題は3つあります。1つ目は、やんばるの森について、手付かずの原生林ではなく、人が介入し続けて利活用と保全を繰り返してきた森、という、歴史文化的背景の理解を促進することです。
2つ目は、「やんばるの森」が都市部にもたらす価値についての理解を促進することです。人が大きな恩恵を受けている森の役割の一つは水源です。また、土の養分は海への供給源となっています。木に十分な光が当たるように除伐して森を手入れすることで、草も良く育つようになって土壌が豊かになり、水を貯える力も高まって土砂災害防止の役割を果たします。森をきちんと管理することで、都市部の人々も多大な恩恵を受けているのです。
3つ目は、これらを踏まえて人の経済活動と森林環境の維持のバランスについて振り返り、森林に関する俯瞰的な視野を持つ機会を提供することです。
今後の取り組み
プロジェクトチーム「チームうふやんばる」は、企画・コンテンツ作りをする株式会社クレコ・ラボ、やんばるの環境保全や環境教育に取り組んでいる団体「やんばるリンクス」をコアメンバーとして、やんばるの森に関心のある企業・団体等と連携しながらプロジェクトを遂行していくことを想定しています。


『世界自然遺産「やんばるの森」を知ってもらおうプロジェクト』の活動を通して、やんばるの森の歴史文化的な背景を多くの方に知ってもらい、森林資源の持つ価値を再認識してもらえる取り組みを続けていきます。


