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お知らせ

【事例紹介】SDGsパスポートを通した沖縄の地域づくり・カーボンニュートラルレンタカー事業の挑戦

REPORT / 2025.06.12

沖縄ツーリスト株式会社
執行役員 SDGs推進担当特命部長
栩野 浩さん

 第1回認証制度で認証された企業のうち「沖縄ツーリスト株式会社」について、同認証制度に申請された取組をピックアップしてご紹介します。併せて、第3回認証の申込が始まったことを踏まえ、申請を検討している団体へのメッセージもいただきました。

「地域に根ざし 世界にはばたく。」をモットーに様々な旅行サービスを提供

 沖縄ツーリスト株式会社は、米軍統治下にあった沖縄が日本に復帰する14年前の1958年、沖縄を訪れる慰霊墓参団の受け入れをきっかけに、那覇市の国際通りで誕生しました。このように地域課題対応を契機に創業し、その後「地域に根ざし 世界にはばたく」をモットーに、観光客・観光事業者・地域の3者のQOLが向上するような、観光を通じた地域づくりに取り組んでいます。

SDGsパスポートの活用を通した地域活動プラットフォームの創出

 沖縄ツーリストは、沖縄県ユネスコ協会の事務局を長年支えており、当該協会が発行する「SDGsパスポート」を通じて、地域活動の県民運動化を推進しています。

 SDGsパスポートとは、地域でのボランティア活動を記録し、30ボラン(=30ポイント)を貯めることで認定証をもらうことができる、という地域ボランティア活動促進のための取組です。SDGsパスポートは、企業や団体、学校を通じて配布しており、昨今の社会教育重視の潮流から、特に中学校や高校での利用が広まっています。

 本プラットフォームでもご紹介してきた「沖縄まるごとゴミ拾い」のようなビーチクリーン活動、清掃活動もボラン対象となっており、年を追うごとに、30ボラン達成者が3名から14名へ、14名から30名へと増加しています。また、年に一度開催している活動報告会では30ボラン達成者への表彰を行いますが、昨年度はSDGsパスポートアンバサダーであり、沖縄県のローカルヒーローの「琉神マブヤー」にサプライズで表彰状を手渡してもらうなど、エンタメ性も織り交ぜながら楽しく活動を続けてもらえる工夫を行いました。

 30ボランを達成して表彰された子どもたちが、学校に戻って友達にその経験を話すことにより、さらにボランティアの輪が広がっていく、という好循環が生まれています。また、生徒から学校に対して「SDGsパスポートを本校でも取り入れてほしい」と申し出をする事例も出てきています。その結果、SDGsパスポートの普及が進み、現時点では幼稚園から大学まで約75の教育機関に広がりました。SDGsパスポートは少しずつ「沖縄県内の学校のスタンダード」になりつつあります。

 本取組は一見旅行業と関係ないようにも見えますが、沖縄ツーリストは、地域に根ざす会社として、旅行業もさることながら、沖縄の地域づくり・社会づくり・地域の繁栄こそが会社のミッションと考えています。地域が輝く活動、地域のためになる活動を推進していくことで、地域の魅力が向上し、長期的に観光振興の効果も出てきます。7月に新たにジャングリアの開業を控え、沖縄観光が一段と盛り上がるタイミングを迎えますので、旅行販売と併せて、地域づくり・社会づくりにもより一層取り組んでいきます。

カーボンニュートラルレンタカー事業の実現

 沖縄ツーリストのもう1つの取組として、レンタカーのEV化と再生可能エネルギーでの充電をセットにした、カーボンニュートラルレンタカー事業があります。

 沖縄ツーリストのレンタカー事業(OTSレンタカー)において、走行中のCO2排出が無いEV車への転換を進めています。最終的にEV車比率を100%とすることを目標に、認証期間である2026年時点で全車比率10%を目標に導入を進めているところです。事業開始から少しずつ拡大を続けており、2025年5月時点では約80台程度、全体の5%強ほどに増加しました。

 本取組は、EV車への転換に加え、太陽光発電による電力でEV車を充電する点がポイントです。通常電力で充電すると、火力発電ではCO2を大量に排出するため、結果的にはEV車が「環境にやさしい」とは言い切れないと言われています。本取組では、自社のレンタカーステーションでの太陽光発電でEVレンタカーを充電するので、発電時を含めてCO2の排出がありません。太陽光発電のみでも、年間で85トンのCO2排出を削減しています。

 EV車の貸渡を開始してから、貸渡件数の比率は徐々に増えており、当初想定していたよりもEV車の需要が高いことがわかっています。EV車を積極的に借りる方は、インバウンド旅行客が多く、特にアジア系の旅行者の方からは「ガソリン車が多いのでEV車をもっと増やしてほしい」と要望いただくこともあります。ガソリン車は、返却時にガソリンを満タンにすることをルール化していますが、EV車は充電せずに返却が可能であるため、返却時の利便性が高い一方、レンタル代はガソリン車よりも高額に設定しています。それでもEV車を借りていく海外の旅行客の姿勢を見ると、日本と海外でのEV車の親和性の違いを見て取ることができ、より日本でもEV車が普及するために沖縄の地からも発信していくことが重要と感じています。

今後の展望と第3回認証への申請を検討している団体へのメッセージ

 沖縄ツーリスト株式会社は、沖縄県が認証する「おきなわSDGs認証制度」の第1回認証団体として、認証されました。

 今後より一層SDGsの活動推進に向けて、ビーチクリーンの観光コンテンツ化を推進していきます。ボランティアをコンテンツとするツアーは「ボランツーリズム」と呼ばれ、海外で普及しつつある取り組みです。例えば、ビーチクリーンのために沖縄の離島に行く離島ビーチクリーンツアーの販売、相対的貧困の子どもたちの体験格差解消のためのビーチクリーン、などです。後者についていて言えば、「子どもの居場所ネットワーク」事業に参加する中で、県内の地域事業者として、すぐに実行に移すことができ、かつ最も重要なことが「体験格差の解消」であると感じたものであり、試験実施でも好評を得ています。

 SDGsパスポートの段落でも触れたとおり、当社は、沖縄の地域づくり・社会づくりを会社のミッションと捉えているので、認証制度についても、直接的に会社への利益を生むかどうかという視点よりも、本業を通じて地域づくりに貢献していくために、認証制度を活用したいと考えています。申請にあたっては、膨大な証書情報を会社中から収集する必要があり苦労しましたが、汗をかいてでも資料を集め、認証をとる意義はあると考えています。現在、認証を取得している団体は大なり小なり同じ志のもと、どうすれば自社の貢献により沖縄県をより発展させることができるか、地域のために何ができるか、という視点を持っていると感じているため、申請を迷っている団体様には、ぜひチャレンジいただき、共に認証団体として沖縄県のSDGs推進の旗振り役として尽力してまいりましょう。

(参考)おきなわSDGs認証制度の詳細についてはこちら

沖縄ツーリスト株式会社
所在地:本店 〒900-8602 沖縄県那覇市松尾1-2-3
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