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【事例紹介】「農業と水産業の垣根をとりさり、世界の若者が主役として食を育て提供する循環社会」を目指す研究活動

REPORT / 2023.09.13

琉球大学 研究推進機構 共創拠点運営部門 特命教授 研究開発課題リーダー 
羽賀史浩さん

琉球大学は、SDGsの達成に貢献する活動に取り組み、様々なパートナーと積極的に連携して、持続可能な社会の実現に向けて行動しています。主に「教育」「研究」「社会貢献」「業務・ガバナンス」に「カーボンニュートラルの推進」を加えた、5つの軸で取組を進めており、今回は「研究」の取組を中心にご紹介します。

■資源循環型共生社会実現に向けた農水一体型サステイナブル陸上養殖のグローバル拠点形成事業

 琉球大学が取り組む、「資源循環型共生社会実現に向けた農水一体型サステイナブル陸上養殖のグローバル拠点事業」は、SDGsの達成に貢献するための「研究」活動であり、COI-NEXT※1に採択されています。

 本プロジェクトは、SDGsに基づく未来のありたい社会像(ビジョン)として、「農業と水産業の垣根をとりさり、世界の若者が主役として食を育て提供する循環社会」を掲げています。

 具体的には、「再生可能エネルギー」や「廃棄食料の資源化」の技術等をデジタルで連携し、資源を循環させる形で、ヤイトハタ(「琉大ミーバイ」・「美らハタ」※2)等の陸上養殖や植物の水耕栽培を一体的に行う、農水一体養殖技術の開発等に取り組んでいます。

■プロジェクトの自立化・自走化に向けた取組

 ビジョンを実現するためには、プロジェクトに関与する人を増やす・収益化の仕組みを作る等により、プロジェクトを自立化・自走化させ持続可能なものとすることが必要です。

 プロジェクトに興味を持っていただいた人が交流できる場を作るために、令和3年には「農水一体型サステイナブル陸上養殖共創コンソーシアム」の活動を開始しました。コンソーシアムでは高校生を含む市民などの多様なステークホルダーを交えて、未来デザインワークショップを開催し高校生の思いがけないひとことから、「農業と水産業の垣根をとりさり、世界の若者が主役として食を育て提供する循環社会」というビジョンを策定しました。未来デザインワークショップを通じて、多様なステークホルダーの方々にも継続的にプロジェクトに関与していただくことを図っています。

 収益化の仕組み作りに向けては、効果的なプロジェクトの周知(ブランディングやマーケティング)に取り組んでいます。「琉大ミーバイ」・「美らハタ」は、美味しいだけではなく、学生や若手研究者の大学での研究成果を養殖生産技術に活かしていくことを考えています。私たちは、陸上養殖の研究の価値と養殖生産物のおいしさが伝わるようにブランディングにも取り組み、「琉大ミーバイ」・「美らハタ」に興味を持つ人を増やすことで、プロジェクトを持続可能なものにしたいと考えています。

 そのほか、この大学研究技術を社会実装し、琉球大学から他地域の大学や企業に展開するという、プロジェクトの横展開にも取り組んでいます。横展開には、単にノウハウや技術を共有するだけではなく、それを活用できる人材を育成する必要があるため、人材育成も積極的に行っています。琉球大学は、アジア・太平洋と隣接していることから、東南アジア諸国等とのネットワークがあります。アジアにおいて本プロジェクトで構築したモデルを実践することで、琉球大学内だけではなく世界全体でビジョンを実現することを目指しています。

写真左:未来デザインワークショップの様子
写真右:プロジェクトに取り組む学生たち

■Startup Lab Ryudai(琉ラボ)

 本プロジェクトのビジョンにおいては、若者が主役の社会を掲げています。学内外に開かれ、実際に活動しながら若者が成長する場として、琉球大学は大学発スタートアップを重要視しています。そこで、一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センターと連携して大学発スタートアップの創出・成長を推進し、ヒト・コト・情報がリアルに交差するオープンスペース「STARTUP LAB RYUDAI(琉ラボ)」を、今年7月に琉球大学内に開設しました。

 琉ラボは、琉大の学生や研究者をはじめ、地域の人が自由に使える場所で、ワクワクする未来の創造に楽しくチャレンジする人やそれを応援する人たちのための共創の場です。「琉ラボを舞台に、ここに集う人から湧き出る”アイデア”を育みイノベーションにチャレンジする人を支援します。琉ラボから始まるオープンイノベーションを世界へ!」をコンセプトに、研究領域の社会実装化、起業家人材の育成・創出、沖縄スタートアップエコシステム地域社会との連携・共創、世界に注目されるオープンイノベーションへの挑戦を推進していきます。

 主に以下の取り組みを行い、常駐するコミュニティマネージャーが、利用者同士の交流をサポートしています。

➀起業家の創出・育成

●学内アントレプレナーシップ教育との連携

:琉球大学内で実施していたアントレプレナーシップに関する講義を、琉ラボ内で開催しています。

●セミナー・ワークショップ

:コミュニティマネージャーやスタートアップ支援企業によるセミナーを実施しています。今後は、一般企業との連携も検討しています。

②研究シーズの発掘・起業支援

●若手研究者の交流

:琉球大学の学生が自身の研究等に関して話し合うことで、起業へのきっかけが生まれることを図る交流会等を実施しています。

●インキュベーション支援

:琉大スタートアップブートキャンプ(学生が起業に必要なプロセスを学び、起業家等からビジネスプランについてフィードバックをうけられるプログラム)等の、インキュベーション支援のプログラムを実施しています。

       写真:Startup Lab Ryudai(琉ラボ)の運営メンバー

 琉球大学は、琉ラボを舞台に、様々な人が交わることによるイノベーションの創出に挑戦していきます。

※1 「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」:JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)が推進する、「組織対組織の産学連携への支援」プログラムの一つ。大学等を中心とした産学官共創において、SDGsに基づく未来のありたい社会像を拠点ビジョンとして掲げ、その実現のため「バックキャストによるイノベーションに資する研究開発」とそれを支える「自立的・持続的な拠点の形成が可能な産学官共創システムの構築」を推進するプログラム。琉球大学のような、地方大学で採択されているケースは少ない。

※2 琉球大学の技術によって陸上養殖されたヤイトハタを、県内向けには「琉大ミーバイ」、県外向けには「美らハタ」というブランド名で商標登録を行い、発信している。

Startup Lab Ryudai(琉ラボ)

所在地:沖縄県中頭郡西原町字千原1番地 地域創生総合研究棟 1F

ホームページ:https://ryulab.jp/